① 被ばくってどういうこと?
放射能を浴びることを被ばくといいます。放射線に対する感度は個人差が大きく、必ずしも被ばくした線量で病気の発生率が決まるわけではありません。
② 外部被ばくと内部被ばくの違い
大気中の放射性物質が体の表面に付着して影響を受けることを外部被ばく、放射性物質に汚染された食品を食べたり、大気中の放射線を吸い込んだりして体内に放射性物質を取り込んでしまうことを内部被ばくといいます。
③ 内部被ばくすると?
内部被ばくは体内から放射性物質が排出されるまで続きます。体内に入ったものは、尿や便、汗など排泄によって減っていきます。つまり、代謝を上げることによって生物学的半減期を短くすることができるのです。
<生物学的半減期>
放射性物質が身体の中にとどまっている期間を示します。
放射性物質 | 半減期 | 生物学的半減期 |
ヨウ素131 | 8日 | 140日 |
セシウム137 | 30年 | 80~100日 |
セシウム134 | 2~3年 | 100~200日 |
ストロンチウム90 | 29年 | 50年 |
④ なぜ放射線でがんになるの?
(1)DNA
強い放射線を浴びると、DNAが切断されたり、複製時のエラーが起きることがあります。DNAにはエラーを自動的に修正する機能がありますが、放射線がその機能を破壊してしまうこともあります。また、DNAには、細胞が適度に分裂するよう調節を行っている部位があり、車のブレーキのような働きをしています。さまざまな種類のブレーキが備わっていることがわかっていますが、たまたまそのどれかが壊されると、分裂が止まらなくなり、細胞は限りなく増え続けていくことになります。これが、がんの正体です。
放射線の被害を受けやすいのは細胞分裂の時期なので、細胞分裂が盛んな子供、乳幼児、胎児はより影響を受けやすくなります。
(2)フリーラジカル
放射線が体内に向かって放たれると、脂肪などを構成する原子が部分的に傷つくことがあります。そのような原子は、正常な形に戻ろうとするため、周りにある健全な原子を激しく攻撃してしまいます。この反応が次々に連鎖反応のように広がっていき、やがてDNAを構成する原子まで傷つけてしまうのです。この反応で生ずる原子、あるいは脂肪などの分子をフリーラジカルと呼びます。フリーラジカルの連鎖反応はいつまでも続く性質なので、体内にはこれを停止させる仕組みも備わっています。また、ビタミンC,ポリフェノール、βカロテンなど「抗酸化物」と呼ばれるものにもこの反応を止める強い作用があるのです。
がんは、細胞にダメージを与える何らかの刺激の繰り返しによって生ずる。放射線も例外ではありません。
放射線対策の3原則
(1)放射性物質を取り込まない
(2)体内に入ったものは速やかに排出する
(3)免疫力を上げて、放射性物質をブロックする
①放射性物質を排出する栄養素とは?
栄養素 | 効果 | 多く含む食材 | ||||
ペクチン | セシウムの排出促進 | りんご、かんきつ類、いちじく、柿、おくら、人参 | ||||
水溶性食物繊維 (アルギン酸など) |
セシウム、ストロンチウムの排出を促進 | 昆布、押し麦、こんにゃく、わらび、ぜんまい | ||||
カルシウム |
放射性物質の排出 細胞の新生 |
干しエビ、ひじき、パルメザンチーズ、ごま、バジル | ||||
鉄 | プルトニウムの排出 | 青のり、ひじき、バジル、タイム | ||||
亜鉛 |
放射性物質の排出 細胞の新生 |
牡蠣、あさり、しじみ、パプリカ | ||||
ジコピリン酸 | ヨウ素、セシウムの排出など | 味噌 | ||||
茶カテキン |
放射性物質の排出 細胞の新生 |
緑茶(特にべにふうき) |
②放射性物質を防御する栄養素とは?
体内には、放射性物質と似た構造の栄養素がいくつかあり、その栄養素が足りないと、そこに放射性物質がたまってしまいます。放射性物質を取り込みにくくするには、似た構造の栄養素で身体を満たしておくことが大切です。また、被ばくによって発生する活性酸素を消去するために、抗酸化作用の高い栄養素も摂るようにしましょう。
栄養素 | 働き | 多く含む食材 | ||||
ヨウ素 | 放射性ヨウ素からの防御 | 昆布、わかめ、ひじきなど海藻類 | ||||
カリウム | セシウムから防御 | 海藻類、豆類、ドライフルーツ、ナッツ、切り干し大根、イモ類、バナナ、アボカド、米ぬか、スキムミルク、黄な粉、山芋 | ||||
カルシウム | ストロンチウムから防御 | 干しエビ、小魚、ひじき、パルメザンチーズ、ごま、ドライバジル、スキムミルク | ||||
ビタミンA (レチノールとβカロテン) |
放射線障害を予防 | レバー、ほたるいか、鶏卵、モロヘイヤ、大葉、人参、パセリ、バジル、パプリカ、ほうれん草 | ||||
ビタミンB(B1,B2,B6など) | 赤・白血球の数を正常化 | 小麦胚芽、豚肉、パセリ、ドライバジル、ニンニク、ピスタチオ、かつお | ||||
ビタミンC | 抗酸化作用、炎症防御 | アセロラジュース、緑茶葉、赤ピーマン、菜の花、芽キャベツ、ブロッコリー、パセリ、レモン | ||||
ビタミンE | 染色体の損傷予防 | 緑茶葉、小麦胚芽、アーモンド、コーン油、菜種油 | ||||
ビタミンD,K | 損傷したDNAを回復 | きくらげ、しらす干し、サーモン、いわし、ひきわり納豆 | ||||
メラトニン | 免疫力アップのためのよい睡眠を促進 | とうもろこし、わらびもち、米、大根、しょうが、オーツ麦 | ||||
抗酸化物質 | 活性酸素を吸収 | クミンやカレー粉などのスパイス類、ココア、チョコレート、ベリー類、プルーン、にんにく、玄米、黒豆、ほうれん草、ブロッコリー、全粒粉パン、ライ麦パン |
参考文献:
福島原発事故 放射能と栄養 白石久二雄著 宮帯出版社
放射能と健康被害20のエビデンス 岡田正彦著 日本評論社
今ある放射能を消す食事 金谷節子監修 主婦と生活社